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582話

そもそも、こちらは私と朵儿の二人がいるのに、彼女はたった一人だ!

私が考えついたこれらの問題を、紗子も明らかに考えていたようで、地下空間は突然、奇妙な静寂に包まれた。

闇の中からかすかに聞こえる水滴の音と、小さな虫が這う音だけが耳に入ってくる。

この膠着状態は三十秒も続かなかった。紗子さんの方から突然「ガラン」という音が聞こえてきた。何か石が足で滑ったような音だった。

その音を聞いた私は、心の中の衝動を抑えて、一切動かなかった。

これまでの紗子との関わりから分かっていることだが、この女はとても慎重で用心深い。こんな状況で、こんなミスを犯すなんて、彼女らしくない。

だから私は罠だと踏...