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509話

海面には一陣の風もなく、むしろ少し蒸し暑いくらいなのに、私たちは思わず身震いした。恐怖で背筋が凍るような感覚だった。

「みんな、顔を上げるな!」

私は急いで叫んだ。

この視線を感じる感覚があまりにも不気味で、普通なら思わず見上げてしまうところだ。

だが、私たちの視線を引きつけるその不気味な黒い影は、この船の上にいるのだ。顔を上げれば、それこそ大変なことになる!

周囲に本当に多くの何者かが私たちを見ているのかどうか、その問いに答えることはできない。というより、考えたくもないことだ!

「どうすればいいの?」

雲児は私にしがみつき、泣きそうな顔をしていた。あの視線に彼女は鳥肌を立て、全...