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487話

この瞬間、まるで世界全体が濃霧に飲み込まれたかのようだった。私たちの小さな船は、暗闇の中のか細い油灯のように、いつ消えてもおかしくなく、あの白い闇に完全に呑まれてしまいそうだった。

冷静な私でさえ、心の奥で焦りを感じ始めていた。

これからどこへ向かえばいいのだろう?

櫂を握りしめ、周囲の汚れを知らない真っ白な霧を見つめていると、もはや海の上にいるのではなく、船に乗って空中を漂い、雲の上、白い夢の中を進んでいるような錯覚に陥った。

この光景は確かに美しかった。心を揺さぶるほどの美しさだ。

だがその美しさはただ恐怖をもたらすだけだった。

あの茫漠とした白さは、計り知れない神秘を秘めてい...