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2998話

「はい。」

バルトは頷き、極めて冷静に私を見つめた。まるで彼の首に突きつけられたナイフなど存在しないかのように。「お前はあの匣を探しに来たんだな?」

「まあね」私は笑みを浮かべた。

「それなら、残念なことになるかもしれないな」

バルトは動じる様子もなく言った。「お前の推測は半分だけ当たっている」

「半分?」

私が首を傾げると、彼はゆっくりと続けた。「確かにあの匣は私が奪い返した。だが、我々の部族はただの小さな部族に過ぎん。大部族キララルの分派だ。あの匣がお前たちにとって重要なものだと知っていたからこそ、奪い返した後、キララルに渡したのだ」

キララル。

私は眉をひそめた。この部族の名前は聞いたこ...