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2836話

しかし、ほんの一瞬の迷いの後、彼は動き出し、がらくたの山から何かを探し始めた。

選択肢などなかった。

異能管理という目標人物として、追われる身である限り、彼の逃亡生活は果てしなく続くだけだ。

そして、その苦しみから抜け出す希望を与えられるのは、この私だけ。

私を信じる以外に、もはや彼に良い選択肢は残されていない。だから今は歯を食いしばって、私の船に乗るしかないのだ。

残念ながら。

彼は私の目には単なる道具に過ぎない。

「行くぞ」

十数分後、私たちはボロボロの服に着替え、顔に草木灰を数回塗りつけ、まるで家のない物乞いのような姿になって、夜の闇に紛れ、灯りがちらつく繁華街へとこっそりと向かった。

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