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2656話

「何もない?」

この言葉を耳にして、私はまず一瞬固まり、それから急いで石棺の側へ駆け寄った。

だが見なければ良かった。見た途端、私は完全に頭が真っ白になった。最初はこの隊員が目が見えていないのか、あるいは何か幻覚でも見ているのかと思ったが、事実は石棺内の遺骨が忽然と姿を消していたのだ!

いや!

石棺内の遺骨はまだ存在している!

常人を超えた視力を頼りに、私は石棺の底に目を凝らした。そこにある灰色がかった黒い粘液に。

先ほど石棺の中で起きた光景を思い返し、私の頭に一つの推測が浮かんだ。棺の蓋を開けた瞬間、日光が中に差し込み、元々その中に封印されていた遺骨は、高温に晒された発泡スチロールのように泡...