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2649話

「ふん」と私は小さく笑った。どれほど奇妙だとしても、所詮はこの程度か……

だがその直後、目の前に現れた異様な光景に、私は一瞬固まってしまった。

私が切り裂いた岩の断面は、まるで鏡のように滑らかで平らだった。それどころか、私の顔まで映し出していた。だが奇妙なのは、その断面から黒い液体がにじみ出てきていることだった。

「くっ——」

この匂い!

何年も腐った肉の臭いが、強烈に鼻を突いてくる。

そして私の常人を超えた鋭敏な五感は、この時こそその欠点を露呈した。超人的な嗅覚のせいで、あらゆる悪臭の一筋一筋まではっきりと感じ取れてしまうのだ。

眉をひそめ、すぐに口と鼻を覆った。

数十歩後退...