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2637話

パスカルは、その二人の消防士に対して致命的な攻撃を加えることはなかった。

ただ一瞥しただけで、まるで身軽な狸猫のように、崩れ落ちた瓦礫を飛び越え、暗闇の中へと軽やかに姿を消した。

「追え!」

私は七号に命令を下し、すぐさまパスカルが消えた方向へと駆けだした。

七号は少々気が進まない様子だったが、私の命令に逆らう勇気はなく、ゆっくりと私の後を追ってきた。

予感がしていた。この事態はすでに大きくなりすぎていると。

今となっては、被害を最小限に抑える唯一の方法は、一刻も早くパスカルを見つけ出し、あの小僧を連れ戻すことだけだった。

私たちの背後では、すでに数台のパトカーと消防車が瓦礫の傍に停車し、車か...