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2522話

「つまり、この獣と正面から渡り合うしかないってことだ」

それでもいい、俺は自分の実力に十分な自信があるからこそ、躊躇なくこの体格が自分より何倍も大きい獣の前に立っているんだ。

派手な光も、華麗な技も使わない。

だが、両手が鋭い爪に変異した瞬間、俺はその獣に向かって突進した。

「うぅ……」

凶犬は喉から低い唸り声を発し、俺に向かって血の滴る大きな口を開け、頭上から噛みついてきた。

上下の顎に計四本、俺の腕よりも太い犬歯が、俺の額めがけて噛み下ろされた。これが当たれば、死ななくても高位脊髄損傷は免れない。

俺は咄嗟にスライディングし、その血に飢えた大口と紙一重でかわした。すぐさま爪を振り上げ、まる...