偽りの御曹司

44話

李雲霄は二階の部屋へ向かう皇甫離を見つめ、その瞳に一筋の諦めが浮かんだ。傅芸晴があのような悲惨な目に遭ったことについて、本来なら彼はこうした問題に関わりたくなかったのだが、傅芸晴に関係することだけに、やはり手を貸さざるを得なかった。

「十億元もの正体不明の証券か、まったく難問だな」李雲霄は憂いを含んだ言葉を漏らしながら、足早に二階へ向かい、自分の部屋に戻って休息を取った。

天啓グループ、18階の社長室にて。

傅芸晴の背後に立つ李雲霄は、一束の書類ファイルを手に取り、笑みを浮かべながら言った。「社長、他に何かご指示はありますか？なければ、これで失礼します」

今の李雲霄は黒いスーツに身を包...