3話
穆司闻は眉を顰めながら、胸の中の嫌悪感を堪えてメールを最後まで読み終えた。指で画面をタップし、即座に返信した。「病んでるんじゃないの？駆け引きのつもり？自己陶酔して顔をケツと勘違いしてるのはあんただけよ」
メールが送信されると、穆司闻はその番号をブロックした。心に溜まった鬱憤はなんとか発散できたが、どこか引っかかるものを感じた。直感が警告を発している。何か悪いことが起きる。
手の中の携帯が「ブルッ」と震え、彼を驚かせた。画面の着信表示を見て、やっと何が間違っていたのか理解した。震える手で電話に出る。
「穆司闻？死にたいのか？契約書にサインしないなら、仕事もなくていいんだぞ！」
一晩中悪夢にうなされた穆司闻は翌日、ギリギリの時間に会社に入った。体内時計はすでに形成されており、昨夜どれだけ遅く寝ても翌朝には定刻に起きられる。
「ふん、昨夜はよく眠れた？社長に囲われるんだって？さぞかし気持ちよく眠れただろうね？」
穆司闻は誰かに占ってもらうべきだと思った。最近なぜこんなに運が悪いのか。昨夜は大社長に間違ってメールを送って仕事を失いかけ、今朝はお尻も座る暇もなく上司から熱烈な「挨拶」を受ける。本当についてないとはこのことだ。
まだ辞めてもいないし契約書にもサインしていない。後ろ盾のない穆司闻はいつも通り、真面目に上司の質問に答えた。「ええ、よく眠れましたよ。ご心配には及びません。お忙しいところ、他のことを気にされた方がいいでしょう」
小心者の上司は彼を睨みつけ、意気消沈した。「ふん、生意気な口を利くな。社長に囲われるからって、結局は人の下で寝転がる身分だろうが」
穆司闻は眉を伏せ、目を伏せ、手にペンを強く握りしめた。固く閉じた唇は一本の細い線になり、奥歯を噛みしめて深く息を吸い込む。心の中で自分に冷静さを保つよう言い聞かせ、笑顔を作り出した。「そうですね。でも私はまだ幸運な方です。ベッドに上りたくても相手にされず、この一生をこの地位でただ食いつなぐだけの人とは違いますから」
「お前！黎工科技の見積書を今日中に提出しろ」口では勝てないなら、仕事で穆司闻を押さえつけ、その鋭気を挫こうとした。
穆司闻は負けを認めた。一時の快感に浸って、今自分がまだ人の手の中にあることを忘れていた。残りのデータと価格をできるだけ早く確認し、なんとか今日の退社までに任務を完了させなければ。
一部始終を目撃していた友人の隋阳が近づいてきて、小声で尋ねた。「徐総が言ってたことって何？囲われるって何？」
本来この件は穆司闻が自分で決めるつもりで誰にも相談していなかった。いい話でもないし、人に聞かれて噂になるのも避けたかった。隋阳は大学の同級生で、卒業後も同じ会社で働き、普段から自分をよく気にかけてくれていた。だがこの件は本当に口にし難かった。
友人が自分を無視するのを見て、隋阳は追及した。「どうしたの？大社長が人に調査させたの？君の体の事を知って、強制しようとしてるの？」
「違う違う」穆司闻は自分が説明しないと、事態がどれほど誇張されるか分からないと思った。「なぜか厳書意が俺に気があるらしくて、契約書にサインしろって。三ヶ月間囲うって」
「そんな良い話があるの？」隋阳は驚きの声を上げ、その後友人をじっくり観察した。「闻闻、言わせてもらうけど、その顔なら、俺だって囲いたくなるよ」
穆司闻は困惑した表情で彼を見つめ、隋阳の分析を待った。
「だってその肌、26歳の男性の肌だなんて誰が思うよ？白くてピンク色で、ニキビもできない。細い腰なのに腹筋はあるし、腕と太ももの筋肉ラインもきれいに鍛えられてる。おまけにお尻まで上向きで」