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893話

いつからか、呉雄峰も香水を好むようになっていた。オーデコロン。これは趙青が夫のパソコンデスクの上で見つけたものだ。ほのかな清香が漂い、嗅ぐと心地良かった。

しかし、女性の嗅覚は時に専門訓練を受けた警察犬よりも鋭敏なものだ。夫の身体から、趙青はもう一つの香りを感じ取っていた。女性特有の幽かな香り。魂を惑わせながらも、決して主張し過ぎない種類のものだった。

きっと洗練された女性なのだろう、と趙青は思った。

「どうしたの、ベイビー?」

呉雄峰は腕の中の愛妻の滑らかな額にキスをしながら、目には微かに申し訳なさそうな気配が漂っていた。

「なんでもないわ。疲れた?」趙青は顔を上げ、格好良くてりり...