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1087話

松林の奥へと伸びる道は桃江ダムへと続いており、あの日二人が密会を重ねた場所だった。

「もう、何よ!」喜児は色哥が立ち止まったまま黙り込むのを見て、ダムのほとりでの逢瀬を思い出し、頬が一面に紅潮した。

「このまま帰るの?...ずっとキスもしてないじゃん...」色哥はもごもごと言った。

「バカね!私がまだ体調が戻ってないってわかってるでしょ...」喜児は顔を赤らめ、ようやく色哥の心の中で何を企んでいるのか理解した。

「あぁ、そうか...」色哥は落胆した表情を浮かべた。「じゃあ、キスだけでも!」

「もう、ほんと救いようがないわね...」喜児は恥じらいながら、急いで前後を見回し、人が来る気配...