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1074話

「お願いだから、そんなことしないで……」彼女は小さな声で言った。心には鈍い痛みが走る。

「お願いだから、そんなことしないで」という言葉。「お願い」という一言が、なんて丁寧で、なんて距離を感じさせ、なんて冷たいのだろう!彼はしばし呆然とし、たった今燃え上がったばかりの情熱が一瞬で凍りついた!

「どうして?どうしてこんな……」彼はつぶやくように言った。端正な顔に苦悩の色が満ちている。

「理由なんてないわ……本当に、私のことを気にかけてくれて、ありがとう……」彼女は声を詰まらせながら言った。二筋の透明な涙が、音もなく彼女の頬を伝い落ちる。

世界は静寂に包まれ、点滴の薬液が滴る音さえ聞こえてくるようだ...