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653話

『シンデレラ』というバーは、決してナイトクラブではなく、ましてや粗暴な輩が跋扈する怪しげなディスコではない。

ここで消費できる客は皆、上品な人々ばかり。彼らの身なりがそれを物語っている。

言ってしまえば、彼らは教養ある悪党、暴力とは無縁の文明人たち。彼らの標的は、良家の娘を装った虚しさと孤独に苛まれる女性たちだ。

だからこそ、水暗影がその場で韓さんの頬を平手打ちし、束になった札束をまるでゴミでも捨てるかのようにサービストレイに投げ入れた時、その場にいた全員が彼女を「お金持ちで、それなりのバックグラウンドを持つセレブ」と見なしたのだ。

くそっ、こんな所に来て良家の娘なんて演じるなよ、わざ...