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556話

ラクダは、どんな生き物よりも、黒砂嵐が襲来した時に何をすべきかを知っている。

だからこそ、黒砂嵐が最寄りの砂丘を襲った時、老ムーリーはすでにラクダに飛び乗り、必死にその首に抱きついて、ラクダが狂ったように走り出すままにしていた。

ラクダは「砂漠の船」と呼ばれ、普段はのろのろとしている。

しかし命からがら逃げる時の疾走速度は、猛烈な馬でさえ及ばないほどだ。恐ろしい黒砂嵐でさえ、彼らに少しは顔を立ててやる——風に乗って逃げる過程で、最も近い避難場所を見つけられるように。

ロバは砂漠での生活など好きではない。ここには骨も、ビールも、可愛い雌犬もない……だが、二兄が車の中に閉じ込められそうにな...