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469話

秦摘花の全身は血まみれだった。

ほとんどは彼自身の血だったが、やや特徴的な顔だけはきれいなままだった。だからこそ、涙で霞んだ目をしても、水暗影には彼の姿がはっきりと見えた。

刃の光が閃くと、白い毛に覆われた頭部が宙を舞い、くるくると回転しながら左側の深い淵へと落ちていった。

彼の左側にはもう一人、同じく全身血まみれの男がいた。左脚は自らの白骨がズボンの裾から突き出し、立っていられるのは左手で秦摘花の肩に寄りかかっているからこそ。右手に握った軍用ナイフを振り上げ、素早く襲いかかってくる白毛の屍に突き立てていた。

これは鉄遼ではなかった。

水暗影はかすかに記...