4話
「何だって？私たちが仲間だって？」
宋楚詞がそう言ったのを聞いて、陸寧は自分が聞き間違えたのではないかと疑った。
「ふん、あなたたち二人が仲間でなければ、どうして彼があなたにそんなに簡単に捕まるわけ？一匹の犬だけで彼を追いかけられるの？なぜ彼をかばうの？私は彼があなたを『兄貴』って呼んでるのを確かに聞いたわよ。あなたも彼のおかげで二千元稼げたって言ってたじゃない！」
宋楚詞はまるで名探偵シャーロック・ホームズのように、すばやくこれらの疑惑を繋ぎ合わせ、思考は明晰で筋道が通っていた。「これは罠よ、あなたたち二人が私に仕掛けた罠！」
陸寧は言葉を失い、右手の親指を立てて褒めた。「お姉さん、本当に頭いいですね。俺たち二人がこんなにリアルに演技してたのに、見破られちゃいましたか。すごい、本当にすごいですね！」
「こんな小細工で私を騙せると思った？」
宋楚詞は口を尖らせ、足を上げて車に乗り込んだ。ドアを閉めようとした瞬間、陸寧が手で止めた。
宋楚詞は冷たい声で尋ねた。「何するつもり？警告しておくけど、ここは大通りよ！」
「何もしませんよ、ただ俺の二千元の苦労代が欲しいだけです」
陸寧は車のドアに寄りかかり、左手の人差し指でちょいちょいと動かして、金を出すよう合図した。
宋楚詞は陸寧が強盗と一味で、自分に罠を仕掛けたと勘違いしている。陸寧はこらえた——彼女はどれだけ頭が悪ければ、そんな結論に達するのだろう？
もし彼女の言う通りなら、陸寧がバッグを返す必要があっただろうか？
結局、バッグの中の現金は千八百元ほどで、携帯などを加えれば確実に二千元を超えるはずだ。
陸寧が反論しないのは、社会経験がマイナス値のこの女と口論するのが面倒だと思ったからだ。しかし、それは彼が当然受け取るべき報酬を諦めるということではなかった。
宋楚詞の表情が変わった。「よくもお金を要求できるわね？」
「ふふ、美人さん、どう思います？」
陸寧はうんざりして、不気味に笑いながら、毛驢に向かって頭を下げて尋ねた。「相棒、俺たちは料金もらうべきだよな？」
毛驢はもちろん話せないが、宋楚詞を睨みつける様子だけで十分だった。まるで親分の命令一つで彼女を車から引きずり出す準備ができているかのようだった。
「わ、私が払わなかったら？」
陸寧と毛驢の険しい表情に、宋楚詞は少し怯えた。
陸寧は何も言わず、ある動作で答えた——手を上げて彼女の胸をつかんだのだ。
「きゃっ！」
電気が走ったかのように、宋楚詞は悲鳴を上げた。
陸寧は手を引っ込め、不気味な笑みを浮かべた。「今日お金を払わなければどうなるか、分かってるよね——俺一人じゃないんだ、もう一人の仲間もいるんだぜ」
毛驢はすぐに立ち上がり、前足二本を陸寧の足に乗せ、体をモゾモゾと動かし始めた。陸寧はそれが気持ち悪くて、すぐに蹴飛ばした。
陸寧はいつも「金を受け取ったら、仕事はやり遂げる」という信条を守っていた。仕事を引き受けたら、大小関わらず全力で完遂する。
同様に、他人のために働いた後は、それに見合った報酬を受け取るべきだと考えていた。
宋楚詞が二千元の報酬を約束したのだから、彼女はそれを支払わなければならない。これは陸寧の仕事の原則であり、誰も変えることはできない。
「わ、私——ふん、たかが二千元じゃない、惜しくもないわ」
毛驢があからさまな態度を見せたのを見て、宋楚詞は本当に怖くなり、今の状況がかなり危険だと認識した。
もちろん、彼女は本当は自分の身分を明かしたかった：私は神通宅急便のオーナーの一人娘よ、あなたが私にお金を要求するなんて、もう生きていたくないの？
大変な努力で、宋楚詞は自分が誰であるかを言わずにいられた：ふん、今言えば、あなたはすぐに態度を変えて私に取り入ろうとするでしょうね。それじゃあ今後どうやってあなたを懲らしめればいいの？
いいわ、今日はあなたの遊びに付き合ってあげる。後で泣くのはあなたよ！
宋楚詞は心の中でそう恨めしく思いながら、バッグの中のすべての紙幣を取り出し、数えもせずに陸寧に渡した。「持っていきなさい、さっさと消えて！」
しかし陸寧は消えず、車のドアから手も離さなかった。
「あ、あなたまだ何か望むの？」
宋楚詞は目を丸くして、少し動揺した：まさか本当に私に何か企んでるの？
「お金が足りない」
陸寧はその札束を見ながら言った。「これ全部で1838元5角だ。まだ161元5角足りないぞ」
「何ですって？」
本能的に、宋楚詞はすぐにお金を数え直した。
確かに、陸寧が言った通りだった。彼女の怒りはさらに増した：なるほど、私の財布にいくら入ってるかまで事前に調べておいたのね、本当に腹立たしい——でも、恐ろしくもある。
深呼吸して、宋楚詞は冷静を装った。「じゃあどうしろっていうの？」
「借用書を書いてくれよ。俺は結構融通が利くほうだ。あの小泥棒もそう言ってたしな」
陸寧はあくびをして、だらしなく答えた。
宋楚詞は不信感を隠さなかった。「た、たった160元のために、借用書を書けっていうの？」
「違う」
陸寧は訂正した。「161元5角だ」
「いいわ、いいわ、本当に男らしいわね！」
宋楚詞は歯を見せて笑い、とても魅惑的な様子で、うなずいて車から紙とペンを取り出し、車のボンネットにさっさと借用書を書き始めた。「あなたの名前は？」
「陸寧、大陸の『陸』に、静寧の『寧』だ」
陸寧はにこにこしながら注意を促した。「日付と、あなたの名前、それから連絡先を書くのを忘れないでね」
宋楚詞はまだ笑っていた。「言われなくても分かってるわよ——ほら、どうぞ！」
陸寧は借用書を受け取り、小声で読んだ。「私は陸寧に161元5角の借りがあります。これをもって証とします。商御卿、連絡先136……携帯番号は偽物じゃないよな？」
宋楚詞は鼻を鳴らして言った。「今すぐ試してみればいいじゃない」
「まあいいや、そんなことしたら信用してないみたいだしな。商さんがこの程度のお金のために偽の電話番号をよこすとは思えないし」
陸寧は一歩後ろに下がり、宋楚詞のために車のドアを閉め、とても丁寧に言った。「商さん、道中お気をつけて」
「私のことは心配しなくていいわ、自分の身の安全を心配したほうがいいんじゃない！」
宋楚詞は下ろした窓から彼をにらみつけ、すぐに車を発進させた。
「うーん、サイズは悪くないな、感触も良かった。まだ初心者って感じだが、頭が少し弱くて、善悪の区別がつかない。残念だ」
陸寧は先ほど宋楚詞のあの部分をつかんだ指をこすり、鼻の下に当てて嗅ぎ、毛驢に言った。「匂いも悪くないな。でも今は兄弟、こんなことを考える気分じゃない。まずは飯だ」