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344話

会社に着く直前、陸寧は斜め向かいにある大きなビルの前に、ヘルメットをかぶった多くの作業員たちが玄関先に集まって何かを談笑している様子を目にした。

去年の初秋、神通急便でアシスタントをしていた頃、自分のオフィスの窓から見えたこのビル。海産物を専門に扱う会社で、どうやら商売は上々だったはずだ。

だが今、ビルの正面の壁に以前あった縦書きの金箔文字(会社名)は剥がされ、引っ越したような様子だった。

おしゃべり好きのタクシー運転手は、陸寧の視線がそちらに向いたのを見て、声をかけてきた。「兄さん、あのビルがなぜ新しいオーナーに変わったのか知ってるか?」

こういった話には普段興味のない陸寧だったが、...