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1297話

「彼女こそ昆侖だ!」

昆侖の刀先が山原百代に向けられ、淡々と彼女に通れと告げた時、銭猿王は思わず小声で叫んだ。小さな目を輝かせ、まるで宇宙人でも見たかのように、興奮で落ち着きを失っていた。

隣の灰兎も同じ様子で、むしろ彼以上に興奮していた。唇が震えて、言葉すら出てこない。

二人の反応に、頬が痛む燕随意は不思議に思った。「さっきも彼女が昆侖だと言っただろう。俺が嘘をつかないことも知っているはずなのに、なぜそんな様子なんだ?」

燕随意には分からなかったが、昆侖は十二支の心の中では、高みにあって仰ぎ見ることさえできない存在だった。普段、彼女の名前が出るだけで、尊崇の念と共に言い表せない恐怖さえ...