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112話

ロバの歯が、闇夜の中で異様に目立っていた。白く鋭い歯が、邪悪な輝きを放っている。

林武は思いもしなかった。これまで彼がしゃがんでレンガを取る素振りをするだけで、尻尾を巻いて逃げ出していたロバが、兄貴の陸寧よりもさらに演技が上手いとは。

あるいは、演技ではないのかもしれない。

ロバそのものが臆病者なのだ。

だが兄貴が予測不能で抗えない危険に遭遇すると、ロバは一変する。狼よりも恐ろしい怪物となり、もはや金に目がなく色欲に溢れた下賤な犬ではなくなる。

あらゆるものの変化には、特定の基盤がある。

唐王から離れてからちょうど二日二晩が経った。

この二日二晩の間、林武がいつロバを見ても、常に...