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1108話

風呂を済ませたばかりの山原百代が、ゆっくりとヴィラから出てくると、西の空に沈みゆく夕陽の光が彼女の肩に散らした髪に降り注ぎ、金色の後光を生み出していた。それが彼女に、さらに多くの塵世を超えた気品を添えていた。

「ボス、俺は先に戻ります」

グリンデは空気を読める男だった。後ろを振り返って一瞥しただけで、立ち上がり陸寧に小声で別れを告げた。

「しばらくは他の者には、私がすでに山に来ていることを話さないでくれ」

陸寧は言い含めた。

「わかりました」

グリンデは展望台から歩み去り、すでに地面に寝そべっているロバに向かって指を鳴らした。行くぞという意味だ。

ロバは彼を無視した。

大将が戻...