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1007話

「もしもし……」彼女は力なく声を出した。

「美人、何してるの?まだ来ないの?」向こうから大きな声で質問が飛んできた。騒がしい様子から教室にいることがすぐわかった。

「風邪を引いて、具合が悪くて……」彼女は小さな声で答えた。

「風邪なの?じゃあゆっくり休んでね、これからも連絡取り合おうね!」相手は言った。

「うん……」彼女はそう返した。

「じゃあ、切るね、バイバイ!」杜主任はそう言って、しつこく引き止めるタイプの女性ではなかった。

「うん、電話くれてありがとう、バイバイ……」

これからも連絡を取り合おう、なんて、もう二度とないだろうな、と彼女は暗い気持ちで考えた。記憶には選択性があるというけれど...