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758話

指揮所内の雰囲気は、一瞬にして異様なものに変わった。

誰も想像していなかった。龍崎大川の手腕がこれほど狠い(むご)いとは。彼は来る前にすべてを準備しており、毒を服することすら厭わなかった。

しかし、誰も知らなかったのだ。この六十年間、龍崎大川は高層会議に臨むたびに、事前に緩効性の毒を服用していたことを。

一つはもし身元が発覚して軟禁されることを恐れてのこと、もう一つは彼の特殊な立場ゆえ、彼が死ねば各国の同盟者が機に乗じて動乱を引き起こし、扶桑国に絶好の機会をもたらすからだった。

長年にわたり、実際のところ扶桑国は大東亜共栄圏を再建する考えを一日たりとも捨てていなかった。ただ敗戦後はそれ...