4話
閻京は状況を見て、密かに頷いた。彼の知る限り、少女が行ったのは低血液量性ショックを緩和する正しい処置だった。
周囲の群衆からは、すぐに携帯を取り出して救急車を呼ぶ人が現れた。ここから近くに病院があるものの、ちょうど通勤ラッシュの時間帯で、救急車が到着するにはある程度時間がかかりそうだった。
少女もそれを承知していたようだが、ここには救命設備がないため、救急車を待つしかなかった。彼女は上着を脱いで老人にかけ、さらにバッグから水筒を取り出して老人に少し飲ませた。
これらの措置を講じると、老人の状態は若干改善し、蒼白だった顔に少し血色が戻り、呼吸もゆっくりと安定してきた。
それを見た人々は皆、密かにほっと息をつき、自然と拍手が起こった。その拍手は言うまでもなく、少女に向けられたものだった。
少女は微笑み、自分でも安堵の表情を浮かべた。彼女はまだ卒業していない研修医で、これが初めて一人で緊急事態に対応した経験だったが、幸いにも成功したのだ。
老人の容態が安定し、周囲の人々は徐々に散っていったが、少女はまだ老人の傍らを離れなかった。救急車が来るまで見守るつもりだった。閻京もその場に残り、このような状況で専門の医師がどのように患者をケアするのか見ていた。
数分が経過したが、救急車はまだ姿を見せず、少女は焦ることなく、状態の変化に備えて老人の症状を注視していた。
閻京は患者の状態が安定したと判断し、少女もこれ以上の処置は行わないだろうと思い、立ち去ろうとした。しかし、背を向けたその瞬間、老人が突然痙攣を始め、呼吸も荒くなっているのを目にした。
この状況は閻京にとって予想外だった。少女も驚いて声を上げた。
閻京は眉をひそめた。通常、低血液量性ショックで痙攣が起こることはないはずだ。もしかして老人が転倒した際に他の部分を怪我したのだろうか？
閻京の推測は理にかなっていたが、そうなると、体のスキャンなしでは老人の体に何が起きているのか誰にも分からず、治療など論外だった。
「救急車は？どうしてまだ来ないの？」突然の事態に、少女は手足がすくみ、少し慌てた様子で叫んだ。
残念ながら、救急車がどれほど離れた場所にいるのか分からず、サイレンの音さえ聞こえてこなかった。
閻京の心が動いた。彼は少し躊躇った。昨日ちょうど医経から按摩の手法を学んだばかりで、それは筋肉をほぐし、経絡の流れを良くするものだった。老人の症状に対しては、ある程度効果があるはずだった。
「人命救助に遅れは許されない、試してみよう！」閻京は前に進み出て、老人の頭をまっすぐに支え、右手の平で額を押さえ、こめかみをゆっくりとマッサージし始めた。同時に、左手も奇妙な姿勢とリズムで老人の胸部と腹部を軽くたたいていた。
「あっ、何してるの！人を殺すつもりなの！」閻京が突然手を出したため、少女は飛び上がるほど驚いた。彼女自身対処法が分からないこの状況で、この田舎者がどうして手を出せるのか？
「放っておけば、同じように死んでしまう」閻京は冷静に言い、手を止めることなく、治療を続けながら老人の反応を観察した。これは医経を学んでから二度目の実践で、正直なところ自信はなかった。
少女は元々閻京を信用せず、彼を引き離そうとしたが、閻京の治療法は驚くほど早く効果を表し、すぐに老人の痙攣は止まり、呼吸も徐々に落ち着いてきた。
それを見た少女は、口を大きく開けたまま、目の前で起きたことを信じられないといった様子だった。彼女は華夏第二病院のトップ研修医であり、彼女でも対処できなかった状況を、目の前のこの人物が手を振るだけで解決したなんて？
もしこれが本当なら、彼女はあまりにも恥ずかしい立場になってしまう！
しかし、すぐに少女はこれが現実だと気づいた。閻京の治療の下、老人はすでに意識を取り戻し、さらには話すこともできるようになっていたからだ。
「若いの、ありがとうね」老人は混乱していなかった。自分の状態を理解していて、突然の発作は珍しくなかったが、彼を救った人があまりにも若かったことに驚いていた。
「お礼を言うのはお門違いです。私はただの手伝いで、彼女こそが専門の医者です」閻京は手を引き、少女を指さした。
老人はそれを聞き、少女の方を向いて言った。「お嬢ちゃん、ありがとう」
少女は慌てて手を振り、閻京をちらりと見て何か言いたげだったが、何から話せばいいのか分からず、もごもごと言葉に詰まり、その表情がとても愛らしかった。
ちょうどその時、ようやく救急車のサイレンが皆の耳に届いた。
「おじいさん、これからの数日間はしっかり休んで、絶対に無理しないでくださいね。危険ですから」救急車の到着を見て少女はようやく安堵したが、それでも老人に忠告することを忘れなかった。
「分かっておる」老人はにこにこ笑い、理解を示した。
すぐに救急車が到着し、担架を持った救急隊員が降りてきた。少女が前に出て状況を説明すると、彼らは頷き、老人を担架に乗せて車に運び込み、去っていった。
閻京はこれで用事が済んだと判断し、市場の方へ歩き始めた。
予想外だったのは、少女が救急車に同乗せず、閻京の後ろについてきて、澄んだ声で尋ねたことだった。「あの、こんにちは。私は陳璇と言います。あなたのお名前は...？」