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971話

空の下に二メートル以上の高さの高脚テーブルがあり、その上に大きな水甕が置かれていた。茶職人が中に水を注ぎ足している。これはかつてこの地域でのお茶の作法だった。沸かした湯を高脚テーブルの水甕に注ぎ、太陽の光で徐々に温度を下げてから茶葉を淹れるのだ。そうすることで茶葉の香りがより良く保たれるという。もう何年も見ていなかったが、まだ使う人がいるとは思わなかった。

ここのすべてが昔ながらの風情を保っているようだ。店員が持つ長い注ぎ口の急須を見ていると、つい昔の茶館で急須を手に「お湯足しますよー」と声を上げて歩き回っていた給仕の少年を思い出してしまう。

あたりを見回すと、ひっそりとした隅に秦雪の姿を...