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966話

妻の声を聞いて、両方とも嬉しそうだった。東へ西へと、ほぼ一時間ほど話し込み、電話のバッテリーがほとんど尽きかけるまで通話を続けた。

父はあまり多くを語らず、数言の挨拶だけで、ほとんどが母と妻の会話だった。母は妻を懐かしむ言葉の他に、私が分別がなく、能力もないから、普段から妻に理解と世話をしてほしいといった内容ばかり。聞いていると少し気が滅入った。今や一応会社の経営を任されている身なのに、まるで自分で身の回りのことさえできないかのような言われようだ。

ただ、話の終盤になると、私を憂鬱にさせる話題が出てきた。子供を持つことを考えてみてはどうかという遠回しな提案だ。妻は言葉につまった様子で、話もだい...