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666話

「壁に頭をぶつけたいくらいだ」と思いながらも、私は一歩引いて「名前は結構です。どんな風貌の方か、少し教えていただけませんか?」と尋ねた。

「分かりません」と若い店員はあっさり答え、そう言うと背を向けてしゃがみ込み、花束の整理を続けた。ここが唯一の手がかりだ。見つからなければどうしようもない。私はしつこく食い下がった。「はるばる来たんですよ。何か情報でもいただけませんか?」

「あのさ、あなたうるさくない?ここは花屋であって、人探しの場所じゃないんだよ。花を買うんだったらいいけど、そうじゃないなら出ていってくれる?」若い店員は立ち上がり、うんざりした表情で客払いをした。

店員の断固とした態度...