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569話

車の中から妻の後ろ姿を眺めていると、何とも言えない幸せを感じた。彼女が会社の入り口で姿を消すまで見届けてから、私は庄園へと車を走らせた。

この広大でありながら寂しげな庄園を見つめながら、胸の内は複雑だった。ここには私の苦しみが埋もれているようで、同時に希望も与えられている気がした。

今回は、あの大げさなほど広い会議室ではなく、夢潔が以前住んでいた小さな中庭が選ばれていた。ここの草木を見ていると親しみを覚えつつも、どこか悲しい思いが込み上げてくる。

羅姉さんが中で待っていた。希望を失ったのか、それともあの苦しみから抜け出せていないのか、彼女はまるで突然歳を取ったように見え、髪の先には白い糸...