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519話

「ええ」羅姉さんは頷いて、それ以上は何も言わなかった。

あの懐かしくも遠い存在となった山荘を離れ、なぜだか私は車を走らせ、再び山頂に上って少し腰を下ろした。

雨は大分弱まっていた。あの鮮やかな月季の花はもう水に流されてどこかへ行ってしまったのだろう。私はまた新しい花を一輪供えた。

墓の前に座り、先ほど起きたことを彼女に話して聞かせる。まるで彼女がまだ隣に座っているような、私の悩みや苦しみに静かに耳を傾けてくれているような気がした。

持ってきた将棋を広げ、彼女が向かい側にいるつもりで二局ほど指した。時間が経つにつれ、寂しさが増していく。久しく連絡を取っていない妻のことを思うと、いっそう心...