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490話

「将棋を指した後も、気兼ねなく語り合い、笑い合い、現実世界でも紅顔の友となり、心の知己となる」

看護師が前方を案内する中、私の心は小刻みに震えていた。頭の中は千々に乱れる思いで一杯で、ぼんやりと後について階段を上がる。周囲の環境に目を向ける余裕もなく、複雑な手続きに文句を言う気力すらなかった。

ただ早く夢潔に会いたい。彼女が無事であってほしい。考えすぎなのかもしれない。それでも彼女に会うのが怖かった。頭の中をぐるぐると巡る思いが現実になるのが恐ろしかった。意図的なのかはわからないが、看護師の足音はとても軽く、私も大きな音を立てる勇気がなかった。

あたりは恐ろしいほど静かで、たまにすれ違う...