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1767話

「ここよ。あの出来事が私を朦朧とした少女から、大人へと変えていったの。男性に求めるのは頼りがいだって知るようになったわ」彼女の目には感謝の色が浮かんでいた。

私はというと、自分だけの作り上げた世界に沈黙したまま、抜け出せずにいた。

「行きましょう!」妻は突然、目尻の涙をぬぐうと立ち上がった。

「どこへ?」我に返った私は、少し戸惑った。

「お腹すいたから」妻は無理に笑って言った。

今の妻の表情を見て、どこか見覚えがあるような気がした。まるであの日のように、後になって涙を拭き、何事もなかったかのように強がって、私に連れ出してもらおうとしていた。

私も気持ちを切り替え、あの日の光景を再現...