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1211話

「別に欲しくないわよ」妻は助手席に座りながら、口ではそう言いつつも、目には嬉しさが見えていた。だが眉をひそめて続けた。「それと、私の前で"二号さん"なんて呼ばないで。ただの鉄くずの塊じゃない」

「はいはい、かしこまりました」これが女性特有の理不尽なのかどうかはわからないが、賢明に頷くことにした。

車の良し悪しに関わらず、新車に乗るのは格別だ。座り心地も良く、道を走っていると心まで晴れやかになる。

「ところで、車を買うお金はどこから出したの?」団地を出たばかりのところで妻が尋ねてきた。

「心配しないで!会社の業績が良くて、ちゃんと計算したんだ。余裕資金だよ」私は笑って答えた。

「余裕資...