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1205話

「まだ子供だった彼には、三畝の田んぼなんて持ち合わせるはずもなかった。だから彼は一生懸命勉強して、村で初めての大学生になったんです。その日は村中の人が集まって、歌って踊って祝福してくれました。でも、それで何も変わりませんでした。私の成人式は予定通り行われ、彼は結局三畝の田んぼを用意できず、私はあの大きな家の家へ嫁ぐことになったんです」

「今でもはっきり覚えています。彼が希望を失って村を去っていく姿を。さっきと同じように寂しげで、諦めた表情で。彼が悲しむ姿を見て、私もとても辛かった。でも、どう慰めればいいのか分からなかった。私はあの人と結婚したくなかった。好きだったのは向秋で、彼と結婚したかっ...