




2話
「自分は元婴巅峰の修士なのだから、数人の元婴後期の追跡くらい振り切れるはず」
そう思っていた聞人離だったが、それは甘かった。
どこへ逃げようと、どんな手段を尽くそうと、四人の追手は蛆虫のように彼女に纏わりつき、振り払おうにも振り払えない。
常識的に考えれば、一定の距離さえ取れば相手は彼女の行方を捉えられなくなるはず。なのに、彼らはどうやって追いついてくるのか?
考えられるのは、彼女が通った跡に消せない痕跡が残っているということ。
しかし、元婴巅峰の強者が自らの痕跡を消せないはずがない。
そうなると、残るは媚毒が残した痕跡しかない。
その媚毒のことを思うと、聞人離の眉間にはさらに深い皺が刻まれた。
あらゆる解毒丹を服用し、師匠から預かった万毒を解するという浄元丹まで飲み干したというのに、まったく効果がない。
体内では欲望が渦巻き、股間は焼けるような痒みと空虚感に襲われ、何かを見れば、それで自分の空虚を満たし、限りない痒みを和らげたいという衝動に駆られる。
さらに恥ずかしいことに、体内から何かが溢れ出てくるようで、どれだけ両脚を強く閉じても止められない。
ついに聞人離は恥ずかしさを堪え、師匠から与えられた通信符を握りつぶした。
符が砕けるやいなや、耳元に師匠の声が響いた。「離儿、そんなに急いで師を呼ぶとは、何事じゃ?」
「師匠、私は…」
どれほど恥ずかしくとも、聞人離は事の顛末を一部始終師匠に打ち明けた。
「このけだものどもめ!わしが閉関を終えたら、ただではおかんぞ!」老婆は怒りに声を荒げた。
だが、怒りを吐き出した後、一つ溜息をついて続けた。「離儿、この毒は、あの行為なしでは解決できぬのじゃ」
聞人離はもちろん拒否したかった。
「でも私は…」
「もちろん、そんな輩どもの思う壺にはさせぬ!ちょうどお前は少陰じゃから、少陽を見つければよい。まだ元陽を破っていない少陽の者とさえ交われば、二人の絡み合う気が媚毒の気配を覆い隠し、奴らから逃れられる。そうすれば…」
「でも師匠、本当に他に解毒の方法はないのですか?」聞人離は諦めきれずに尋ねた。
元陰を失うことで修行の速度が落ちるのはまだしも、何より彼女は誰にも身を捧げたくなかった。ましてや道で適当に見つけた相手などに。
弟子の気質を知り尽くしている老婆だったが、他に方法がないのは事実だった。
これは天下の至毒媚薬、元婴修士どころか化神期の修士ですら犯されるのだから。
「離儿、わしもお前の気持ちはわかる。だがこれが唯一の解毒法じゃ。さもなくば、お前は…」老婆は言葉を続けられなかった。
返ってきたのは、聞人離の沈黙だけ。
師匠でさえ方法がないというなら、どうすればいいのか?
いつもは冷静沈着な聞人離の心に、初めて慌てが生じた。
しかし耳元には師匠の急かす声が絶えず響いていた。
「離儿、急いで探すのじゃ。決してこの四人に捕まってはならぬ。奴らは見れば分かる、とうの昔に元陽を失い、体内の気は乱れ斑だらけ。お前にとって何の益もない…」
耳には師匠の諭しの言葉、体内には恥辱と怒りを呼び起こす昂ぶり。
この瞬間、聞人離は丹田を自爆して一思いに終わらせたいとさえ思った。
だが、数十年かけて元婴巅峰まで修行してきたのだ。彼女にはまだ輝かしい未来があり、鳳鳴宗全体の責任も背負っている。死にたくはない、死ぬわけにもいかない。
生きたいが、他人と関わるしかない。死にたいが、それも許されない。
なんという悲しみだろう!
そして耳元には師匠の切なる願いが。
そのため、聞人離は心の中では拒絶しながらも、剣に乗って飛行する間に神識を放ち、少陽、つまり純陽の身を保っている者を探さざるを得なかった。
前者なら確かに多いが、後者は極めて少ない。
いたとしても、基本的には幼児か、少数の少年だけ。
成人はおろか、少年さえ多くはない。
なぜこの少陽たちはこうも自分を大切にしないのだろう?
聞人離は心の中でそう愚痴りながらも、同時に見つからないことを願っていた。
適した相手が見つかっても、様々な理由をつけて拒否した。
この人は醜すぎる、あの人は小柄すぎる…
追い詰められた聞人離は、剣に乗って追手から逃げながら、適した相手を探し続けた。
しかし、探しているうちに、もう探せなくなった。
体内の媚毒がついに完全に爆発し、彼女の気配も完全に乱れてしまった。
もう選択している暇はない。
「離儿…」
師匠の心配そうな呼びかけが再び響く。
もう他の可能性はなかった。
聞人離は苦しげに目を閉じ、通信符を壊すと、下方の小さな町へと飛び込んだ。気配だけを頼りに適した人物を見つけると、その姿さえろくに見ないまま、その人物を掴んで先へと飛んでいった。
もちろん、彼女はその人物の気が極めて弱く、修行の気配がまったくないことを感じ取り、その周りに守りの結界を張った。
小さな乞食の少年はあまりにも空腹だった。食べ物を乞うこともできず、早々に廃寺に戻って体を丸め、眠りにつくことで空腹感を忘れようとしていた。
しかし、どれだけ目を固く閉じても、腹の空腹感は絶えず自己主張を続け、無視することさえ難しかった。
腹がぐうぐうと鳴り止まない中、突然、鼻孔に彼が嗅いだこともない甘い香りが漂ってきた。
だが、その香りに誘われる前に、彼はまず捕らえられてしまった。
そして、かつて経験したことのない浮遊感に襲われ、思わず自分を捕まえた人にしがみつき、口から悲鳴と懇願の言葉が溢れ出た。
「あああ、ああ…やめて、捕まえないで、お願い…」
小さな乞食が大声で叫んでいると、耳元に女性の声が響いた。「黙りなさい!」
その怒声に乞食は即座に口を閉ざした。
もちろん、突然の静寂にも驚き、思わずしゃっくりが出た。
「ひっく、うぅ」
しゃっくりした後、すぐにまた口を閉じた。
しばらくして、彼はようやく気づいた。捕まえたのは何か怪物ではなく、人間だ。それも女性だった。
そして彼は、空中を飛んでいた。
空中を?
小さな乞食は下を見て、すぐに目を閉じ、この仙人のお姉さんの体にしがみついた。
絶対に落ちてはならない、落ちれば肉片になってしまう。
聞人離はこの者を叱り、自分にこんなにきつく抱きつくなと言おうとしたが、毒を解くにはむしろ抱き合うべきだと思い直した。
今の彼らには、二人の香りが絡み合い、媚毒の気配を隠して、追手から逃れる必要があるのだ。
そのため、口を開きかけた美しい宗主は叱責の言葉を飲み込み、むしろ相手を強く抱きしめた。自分の体から放たれる香りで相手の香りを引き出し、そして…