2話
「実は、世界のルールは最も公平なものなんだよ。人類には多くのチャンスが与えられていた。ただ、人類が自業自得で、同類を傷つけ、幾度もチャンスを失い、終末に抵抗できるほどの進化を遂げられなかった。その後も互いに殺し合い、最終的に滅亡への道を歩んだんだ」
重要なポイントが来た！
チャンスとか進化とか人類の滅亡とか、一聞して重要な内容だと分かる。女は当然、注意深く聞き入る。
確かにシステムの言うことは正しい。特に「互いに殺し合う」という点については、彼女自身が深く共感している。そうでなければ、殺し屋という職業が存在するはずがない。
しかし、システムはそれ以上の説明をせず、むしろ彼女に質問してきた。「殺し屋として、体の鍛錬は一般人より遥かに多く、男性との肉体的な対決も珍しくないはずだ。人体についての理解度は高いだろう？
男女、この二つの性別はどちらが強くてどちらが弱いか、どちらが良くてどちらが悪いと思う？また、現代の記憶を受け取った上で、人類の権力が女性の手にあるべきか、それとも男性の手にあるべきか、あるいはいわゆる権力の均等配分が人類の発展により有益だと思うか？」
「うーん...」女は考え込み始めた。
しばらくして答えを出した。「最初の質問だけど、もし終末世界がなければ、女性の方が男性より優れていると思う。男性の唯一の利点は力が強いということだけ。でも、今日のテクノロジー社会ではそれはほとんど問題にならない。
男性ができることは女性もすべてできる。逆に、人類の最も重要な継承——出産は女性だけのものよ。人工精子はもう登場したでしょう？ただ禁止されただけで。人類は男性がいなくても存続できるけど、女性がいなければ続けられない。私は、あってもなくてもいい性別がもう一方の性別より優れているとは思わない。
ただ、終末世界の到来で、力がまた重要になったみたい。異能力者がいるとはいえ、結局は少数派で、大多数はただの一般人。ABOの変異は男女の機能の一部を逆転させたけど、AOも少数派よ。
全体的に見れば、人類内部の継続はやはり女性に、いや、出産能力を持つ「産む性」に依存している。そして人類と外部の生存競争は、「産まない性」により依存している。でもこれは変わり得ることだわ」
システムはさらに尋ねる。「あなたの言い方だと、女性、つまり「産む性」が主体で第一の性、「産まない性」が客体で第二の性だと考えているようね？なぜ両者が同等に重要ではないの？」
女は首を振った。「出産は平等に分けられないからよ。人類への貢献にはもともと差がある。たとえ「産まない性」が自分の地位を高めるために出産の重要性や効果を貶めようとしても、事実を覆い隠すことはできないわ」
それを聞いて、システムは彼女に注意した。「忘れないで、今のあなたも『産まない性』に属しているわよ」
女はため息をついた。「ああ、わかってるわ」
システムの質問は当然無駄ではない。宿主としてこの世界最後の救世主である彼女の考えは、任務の過程と結果に直接影響する。また、システムが任務を調整する際の参考基準の一つでもある。「では、後半の質問は？」
「明らかに、権力は『産む性』の手にあってこそ人類の発展に最も有益だし、彼女たちの手にあってこそ、長期的で健全な発展が可能になるわ」
システムは尋ねた。「理由は？」
「『産まない性』は出産の客体であり、彼らには出産能力がない。次世代に対して、生まれながらに親子関係の不確実性がある。自分のすべてを次世代に伝えるために、必然的に『産む性』から成果を奪い、子孫と自分を結びつけ、血筋の継続を確かなものにしようとする。
そしてこれは必然的にもう一方の性別を抑圧することになる。さらに自分の次世代も全てを継承できるよう、自分の性別が常に高い地位にあることを確保し、次世代も自分と同じ性別であることを保証しなければならない。そうしないと、彼らが奪ったものは次世代で別の略奪者に奪われてしまう。
このように繰り返されていくと、真の平等は決して達成できない。もし平等になれば、どうやって他人の成果を奪って自分の権力を維持できるというの？
さらに、命を宿すことのできない者は、妊娠過程の苦労を身をもって感じることができないから、命に対する畏敬の念を持てない。どんな命も、たとえ自分の血を引く子孫でさえ、彼らの目には手中の権力を維持するための道具に過ぎないわ。
一つ一つの命は彼らにとって単なる数字。道具として当然、役立つものを優先的に選び、役立たないものは捨て、破壊し、あるいは他の利益と交換する。決して両者を平等に扱わない。
『産む性』は違う。命を育む者として、彼らの目には一つ一つの命が貴重で重要。どの子供も彼らが大きなリスクを冒して産んだもの。自然な状態では、必然的にすべての子孫を平等に扱うわ。
さらに、『産む性』は人類の継続のために優れた遺伝子を選別する責任を担っている。選択する権力があれば、次世代に責任を持つ原則に基づいて、『産まない性』の中から質の高い遺伝子を選ぶはず、子孫の質を高めるためにね。
選ばれる側として、『産まない性』が自分の血筋を継続させたいなら、できる限り能力を高め、同類との競争で際立ち、『産む性』に選ばれなければならない。
こうして初めて人類は優勝劣敗の効果を達成できる。でももし『産まない性』に権力を握らせたら、遺伝子を伝える本能から、彼らは男女関係で主導権を握ろうとあらゆる手段を尽くすだろう。そうなると、権力を失った『産む性』は優れた遺伝子を選別する責任を果たせなくなり、人類は永遠に進化できない...」
もし女性が権力を握る社会だったら、男性に依存する必要のない母親は、女の子だからといって彼女を捨てることはなかっただろうか？
女の回答は明らかにシステムを満足させるものだった。「なるほど、やはり自分の考えをしっかり持っているね。さすが本システムが選んだ人物だ。君には大いに期待しているよ、君は本当に...」
「もういいわ、あなたの質問には全部答えた。今度は私が知りたいことを教えて」このシステムは明らかにおしゃべり好きで、女は長話を聞きたくなかったので、すぐに遮った。
システムは仕方なく本題に入った。「わかったよ。実は、通常の発展に従えば、人類はこの試練に耐えられたはずなんだ。でも、君が言ったように、『産む性』としての女性が長期にわたって権力を失っていたため、優秀な遺伝子を選別する責任を果たせず、人類は十分な進化を遂げられなかった。最後には耐えられなくなって...
だから、世界のルールは人類に裏口を開け、もう一度チャンスを与えた。それが3年前のABO変異だ。アルファに進化した人々は力が増し、体力が強化された...オメガに進化した人々は、孕む能力が大幅に向上し、五感がより鋭くなった...
終末世界のような極めて厳しい環境では、孕む能力と強い実力が同様に重要なんだ。
しかし結果は、人類の進化は理想的ではなく、むしろ悲惨だった。進化したAOはあまりにも少なく、AOの中の男女比率も深刻に不均衡だった...
それだけならまだしも、終末後、人類の力の半分を占める女性が奴隷にされ、見捨てられ、人類は加速度的に破滅への道を歩んでいる...」
システムはあれこれと長々と話したが、彼女がまとめると、女性の権力喪失が人類を滅亡に導いたということ。そして彼女に救世主として、この状況を変えさせたいということか？