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609話

車は山全体の三分の一ほどを進んだところで、突然道を変え、一本の細い山道へと入り込み、うっそうとした深い森や灌木の中へと消えていった。

約三十分ほど進み続ける間、趙哲は道中を観察していた。これまでに曲がった曲がり角は少なくとも百を超え、さらに人工的に造られた隠し通路や地下通路まであった。長年落ち葉や土に埋もれているため、まったく見分けがつかない。一般の人間がこの道を行けば、たちまち方向感覚を失ってしまうだろう。

分岐点や隠し通路があまりにも多く、東西南北の区別すらつかなくなるほどだった。

「ふん、さすが東北の獅王だな。金持ちは違うぜ、こんな大掛かりな仕掛けまで用意するとはな」趙哲は周囲を見...