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373話

慰めの言葉ではあったが、それは向雨滢に安心感を与えた。彼女はほっと息をついたようだったが、張天の腕から離れる気配は全くなく、むしろ彼をより一層強く抱きしめていた。

張天は胸元に感じる彼女の温もりに、心が揺さぶられるのを感じていた。心惹かれずにはいられない。「怀中に美女を抱いても乱れぬ心こそ君子」などと言うが、そんなのは完全に嘘っぱちだ。美女を前にして何も感じないなんて、そいつは絶対に性的指向に問題がある。

張天は思わず口にした。「雨滢、ちょっと離れてくれないか。もう大丈夫だから」

向雨滢は顔を上げて張天を見た。薄暗い廊下の中でも、向雨滢の瞳は異様なほど輝いて見えた。張天はその瞳から溢れ出...