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68話

「明白先生」の井燃は手に汗をかいていた。緊張していないなどと言えば嘘になる。

夕食後、冷凛は彼をアーサーバーへと連れて行った。バーの中は人が多くなく、二三人のグループがあちこちで酒を飲んでいた。冷凛は真っ直ぐエレベーターホールへ向かい、地下二階のボタンを押した。地下二階のエレベーターを出るとすぐに身分確認のスタッフがいた。冷凛がカードを取り出すと、スタッフはそれを確認して通してくれた。「Lさま、どうぞお入りください」

「この業界では『L』と呼ばれているんですか?シンプル過ぎて面白みがないですね」井燃は皮肉を言った。

地下も一見バーのようだったが、上の階とは違っていた。中央のステージには様...