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144話

冷凛は数秒だけ考えてから車を発進させ、カーナビに目的地のL市を入力した。実際、G市と彼の住むC市、そして井燃の家があるL市は三角形の位置関係にあり、どれも百数十キロ程度で、車で最大でも二時間ほどだ。今日は大晦日で道路も空いているから、もっと早く着くだろう。L市に着いても、まだ十二時になるまで二十分ほど余裕がある。

井燃の家の近くに停車してから、冷凛は躊躇った。今日で一年が終わるというのに、こんな衝動的な行動をとるなんて。井燃に電話をかけるべきだろうか。でも、彼はまだ帰宅していないかもしれないし、帰っていたとしても両親と一緒に家族団欒の時間を過ごしているはずだ。

井燃がさりげなく口にした団地...