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311話

「僕は君に伝えたくて来たんだ。夏雨涵が行ってしまったことを」仮面の男は、軽く息を吐きながら言った。

「夏雨涵が行ったことを教えに来たの?」僕は一瞬考え込んでから、頷いて言った。「知ってるよ。彼女からもうメールが来てたから」

「じゃあ、彼女がどこに行ったのか知っているのか?」仮面の男は続けて尋ねてきた。

僕は正直に答えた。「実家に帰るって言ってたよ。しばらくの間ね。前から聞いてたし、知ってるけど、何かあったの?」

「実家じゃない。彼女は海外に行ったんだ。少なくとも三年はかかる旅立ちだ。彼女の願いは、出発前に君に見送ってもらうことだった。でも、そうはならなかった」

「え、海外だって?」

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