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990話

凌菲は綺麗な大きな瞳をぱちくりさせると、美しい頬を伝って涙が二筋流れ落ちた。そして高凡に向かって幸せそうに微笑み、そっと彼の肩に寄りかかった。

夜空は澄み渡り、月明かりが目の前の小川の水面に降り注ぎ、ゆっくりと流れる水と一体となっていた。辺りの闇は、ひときわ静謐に包まれていた。

しばらくして、凌菲が突然小さな声で呼びかけた。「高凡」

高凡は腕の中の凌菲を見下ろし、優しく尋ねた。「どうしたの?」

凌菲は柔らかな声で言った。「山の中にまだ大事なものがあるの。今から私と一緒に取りに行ってくれる?」

高凡は「うん」と返事をすると、立ち上がって凌菲の手を引き、村の裏山へと向かった。

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