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1093話

「でもね、その時は人が多くて、目も多かったから、あげる勇気がなかったの」

林桂芳の言葉を聞いて、高凡は感謝の表情を浮かべた。本草綱目とは、中医にとってまさに翼を得た虎のような宝書だ。しかもこの本草綱目は、どうやら孤本のようで、東洋の図版はほとんどが毛筆で描かれている。各種薬草の形状や特徴、治療効果まで非常に詳細に描かれていた。

このように見れば、この本は李時珍の原本ではないにしても、少なくとも明清時代の骨董品だろう。林桂芳がこの本を持ってきてくれたのは、まさに雪中の炭を送るような有り難い行為だった。

そう思うと、高凡は嬉しそうに本草綱目を手に取った。林桂芳を見つめると、突然にやにやと...