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第363章

王迪はスプーンをカップに戻した。劉熙然がコーヒーをすくい始める前に、王迪はすでに大きく口を開けていた。

「もう、嫌だわ」

劉熙然は今になって先ほどの決断を後悔していた。王迪に自分の彼氏を演じさせるなんて、まさに最悪の選択だった。

王迪が眉をひそめ、半分の高さの仕切りのある個室の方へ視線を向けた。劉熙然がそちらを振り向くと、歩堯廉が二階のホールから急ぎ足でこちらの個室へ向かってきているところだった。

歩堯廉は白いスーツを身にまとい、手にはバラの花束を抱えていた。どこか王子様のような風格があったものの、鼻の上にあるメタルリングを見て、王迪は思わず実家の老牛を思い出してしまった。

歩堯廉は...