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549話

韓山は恐怖に震えた。すぐに車を降り、通りを一人で歩き始めた。表情は冷酷だった。振り返りはしなかったが、背後に誰かがついてくる気配を感じていた。

しかし、韓山が振り向いた瞬間、そこには何も見えなかった。

韓山の顔色は一瞬で暗くなり、薄暗い路地に足を踏み入れた。

「そこの方、もう出てきたらどうです?」韓山は出口に背を向けたまま、冷たく言い放った。

その言葉が落ちた直後、背後から足音が響いてきた。

その足音を聞いて、韓山の目が一瞬輝いた。

「東子、お前か!」韓山は反射的に振り返り、黒い長衣を着た人物を見た途端、顔に興奮の色が浮かんだ。

韓山はその人物の様子から、間違いなく東子だと感じていた。

「東子...