2話
一瞬にして、韓山の顔色が変わった。
明らかに彼は、この華強がまさかこうも唐突に手を出してくるとは思いもよらなかった。
自分のことを知らないにしても、せめて自分の素性を確かめてから、どう対応するか決めるべきではないか？
泥人形でさえ怒りの一つや二つあるものだ。まして特殊部隊の精鋭兵士である韓山が、華強の理不尽な暴力を目の当たりにして、冷ややかに鼻を鳴らし、その場に動かず立ったまま、嘲るような目で華強を見つめたのも当然だった。
はぁっ……
この光景を目にして、その場にいた全員が思わず冷たい息を飲み込んだ。
誰もが華強の実力をよく知っていた。彼らはかつて、華強がコンクリートの壁を一撃で粉砕するのを目の当たりにしていたのだ。もしこの一撃が韓山の体に直撃すれば、命は取り留めても、おそらく一生の重傷を負うことになるだろう。
徐若溪でさえ、目の前の光景に小さな顔を真っ青にして、思わず叫んだ。「やめて！」
彼女は愚かではなかった。今となっては韓山が自分を害するつもりなどないことを理解していた。
そうでなければ、彼女を直接祖父の別荘に連れてくるはずがない。さっきあれほど怒ったのも、自分をゴミ運搬車のように扱ったことや、自分に手を出したことに腹を立てていただけで、誰かに韓山を痛い目に遭わせたいと思っただけだった。
彼女は決して韓山を殺そうなどとは思っていなかった！
だが徐若溪を絶望させたのは、華強がまったく手を引く様子を見せず、むしろ韓山が避けなかったのを見て、唇の端に残忍な笑みを浮かべ、そのまま強烈な一撃を韓山の胸に叩き込んだことだった。
その瞬間、ほとんど全員が思わず目を閉じた。彼らは韓山の惨めな姿を見るに忍びなかったのだ。徐若溪に至っては大声で叫んだ。「早く救急車を！お医者さんを呼んで……」
皆の目には、今の韓山はすでに死人同然に見えていたからだ。
ドン！
鈍い音とともに、別荘内に悲鳴が響き渡った。
しかし、ほんの一瞬後、全員が目を開けた時、目の前の光景に皆が呆然と立ち尽くし、その目には信じられないという表情が浮かんでいた。
まさか……！
皆の視線の先には、まるで鉄の壁に拳を叩きつけたかのような華強の姿があった。人間の肉体ではなく、韓山は口元に冷笑を浮かべたまま、嘲るように華強を見つめていた。
「いや、そんなはずがない！」華強はほとんど恐怖に近い声で叫んだ。
その後、彼はまるで発狂したかのように、雨のように拳を韓山に叩き込んだ。しかし韓山はそれを避けようともせず、ただ静かにその場に立ったまま余裕の表情を浮かべ、しばらくしてから突然右手を伸ばし、華強の手首をがっしりと掴んだ。
その瞬間、華強は明らかに動きを止めた。
今、韓山に掴まれた手は、華強にとってはまるで堅固な鋼鉄の鉗子のようだった。自分の手首をしっかりと捕らえ、生涯で最大の力を込めても、まったく振りほどくことができなかった。
今となっては、自分が本物の強敵に出会ったことを理解せざるを得なかった。
「遊びはここまでだ。次は俺の番だな」韓山は冷ややかに口を開いた。
言い終わるか終わらないかのうちに、華強が反応する間もなく、韓山は強烈な一蹴りを華強の胸に叩き込んだ。別荘内の人々の驚きの声とともに、華強は砲弾のように吹き飛ばされ、冷たい床に叩きつけられた。
冷たい床の上で、華強はしばらく必死にもがいたが、もう立ち上がることはできなかった。
自分が完敗したにもかかわらず、華強の心はさらに怒りに燃え、さらには毒々しい感情さえ芽生えていた。
徐若溪は彼の心の肉だったが、今や韓山の出現によって危機感を覚えていた。
そのため、この時点で韓山が本当に自分の主人に雇われたボディガードであると確信していたにもかかわらず、冷静さを完全に失った華強は大声で叫んだ。「こいつが旦那を誘拐した犯人に違いない！みんな、やれ！」
周囲の者たちは一瞬戸惑ったが、それでも韓山に向かって一斉に襲いかかった。
「死にたいのか」
韓山はこの言葉に眉をひそめ、口元に冷酷な笑みを浮かべると、すぐさま大勢と激しい戦闘を繰り広げた。
バン、バン、バン！
わずか38秒で、徐若溪を除く全員が倒れていた。
静寂。死のような静けさが支配した。
皆は恐怖に満ちた目で韓山を見つめていた。明らかに、韓山の一見華奢な体からどうしてこれほどの恐るべき力が生まれるのか理解できなかった。
特に救急車を呼ぼうとしていた徐若溪は、今や小さな口をO型に開け、信じられないという表情を浮かべていた。
華強は自分の祖父の側近ボディガードだ。徐若溪が華強の強さを知らないはずがなかった。
しかし今、韓山のような男の手にかかっては、一撃も耐えられなかった……
全員が震撼して韓山を見つめ、一時言葉を忘れていた。
ギィッ！
ちょうどその時、別荘の大扉が再び開かれ、警察の制服を着た、全身から有能さを漂わせる女性警官が入ってきた。しかし、現場の惨状を目にして、小さな口に驚きを浮かべた。
だが彼女の視線が再び韓山に集中すると、次第に諦め、無力感、心の痛み、悔しさなど、複雑な感情が表れてきた。
別荘の扉が開いた時、韓山も当然ドアの方に目を向けた。そして女性警官の姿を見た瞬間、彼の表情も一瞬暗くなり、最後には深い溜息へと変わった。
ほとんど一瞬のうちに、韓山の顔は曇った。
可能ならば、韓山は生涯彼女に二度と会いたくなかった。だが思いがけない運命のいたずらで、今日このような場面で、二人は再会することになったのだ。
おそらく韓山はまだ知らなかっただろう。彼が徐若溪のボディガードになれたのも、龍彤櫻の取り持ちがあったからこそだということを。
そして韓山の表情の変化は、当然龍彤櫻の目にも映り、彼女の心に苦い痛みが湧き上がってきた。彼女もまた当時の自分が、あんなにも傲慢で高慢だったこと、韓山の正しい意見を聞き入れず、自分の意見に固執し、独断的だったことを深く恨んでいた。
もしそうでなければ、おそらく状況は今日のようにはならなかっただろう。
通常の状況であれば、おそらく彼女は一生韓山と関わることはなかっただろう。この件がどれほど彼女の心を痛めていても、時間の経過とともに、彼女の心の中で徐々に薄れていったかもしれない。
しかし思いがけないことに、あの事件のせいで、龍彤櫻はずっと気にかけ続けていただけでなく、当時の韓山が勇敢に自分を守った姿、天が崩れ落ちても常に冷静さと平静さを保った表情に次第に引かれ、今では秘かな思いを抱き、夜も眠れないほどになっていた。
龍彤櫻は心の中で、自分がすでに韓山に恋をしていることを知っていた。
彼女は心の中で、韓山の数多くの戦友や実の妹の命を奪う原因となった自分が、おそらく一生韓山と結ばれる可能性はないことも理解していた。
しかし、彼女の心はまだ彼を手放せなかった。
それゆえに、今回徐若溪の祖父が孫娘のボディガードのことで悩んでいるのを見た時、不思議と韓山を紹介してしまったのだ……
はぁ！
同じように長い溜息をつきながら、龍彤櫻はようやく思考を現実に戻し、現場の状況を見て直接口を開いた。「韓山さんは徐お爺さんが直々に徐若溪を守るために呼んだボディガードです。あなたたち、一体何をしているんですか？」
この一言で、その場にいた全員が呆然としてしまった。