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71話

墨のように濃い夜の闇の中、彼の声が寒々しい風と混ざって耳に流れ込み、戴月荷はびっくりして二歩後ずさり、信じられないといった様子で目を見開いた。

そういうことだったのか。だから彼はあの緑衣の女中からお金を受け取りたくなかったんだ。だから先ほどあんなに怒っていたのだ。

自分こそ目が曇っていた。柳氏が米屋で教えてくれたことをすっかり忘れていたなんて。

もし彼が今止めてくれなかったら、明日天祥閣に飴りんごを届けに行った時、きっと大勢の人に笑われていただろう。

「そういうことだったのね。私が悪かったわ。あまりにも愚かで、そんなこと考えもしなかった」

心を落ち着かせると、戴月荷は風に顔に張り付い...