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35話

朝のつかの間の涼しさも、徐々に昇る太陽とともに消え去り、戴月荷の額と鼻先には、すでに細かい汗の粒が浮かんでいた。

芸娘がそう言うのを聞くと、彼女の大きな瞳には即座に恐怖の色が浮かび、瞬く間に涙が目に溢れ始めた。

「芸娘、気遣ってくれてありがとう。でも私のことは構わないで。あのお金は私が義姉さんに自分から渡したの。義姉さんが悪いわけじゃない。兄に早く伝えなかった私が悪くて、二人がこんなに大喧嘩することになってしまったの」

友人の細い腕をすぐに掴み、戴月荷は慌てた表情で説明した。これ以上問題を複雑にしたくなかった。

今の彼女の唯一の心配は兄の怪我のことだった。たかがこれっぽっちの銀子のため...