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79話

思琪の家を出ると、李さんはようやく肩の荷が下りたように小さな鼻歌を歌いながら通りに出て、何気なくタクシーを拾って帰宅した。

やはり家の温もりこそが、彼が最も恋しく思うものだった。

夕方の九時、李さんが無事に家に戻ると、自分の部屋で宿題をしていた月月もすぐに気づいた。

「李おじさん、やっと帰ってきたんだね。もう今夜は帰ってこないかと思って、自分の部屋で寝るつもりだったよ!」窓から李さんの姿を見つけるなり、月月はすぐに興奮して部屋から飛び出してきた。李さんと過ごすようになってからは、義理の両親との時間さえ減っていた。

「まあまあ、うちの嫁さんったら、今じゃ李さんに会うほうが、あんたに会うより...