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1143話

目を閉じて深く呼吸していた肖薔薇の腰が、優しく誰かに抱きしめられた。振り返ると、優しい眼差しが彼女を見つめていた。

ここで都会の喧騒や駆け引きから離れ、愛する人と平穏な生活を送るのも悪くない——二人は心の中で同じことを思っていた。思いが一致していることに気づかぬまま。

「お金、まだ持ってる?ちょっと食べ物買ってくるよ」葉天明は優しい口調で言った。

肖薔薇は身体中を探り回ったが、最終的に葉天明の前に現れたのは一元硬貨一枚だけだった。

二人は顔を見合わせ、思わず大笑いした。羅家のお姫様と婿候補がこんなに窮地に立たされているなんて、誰が想像できただろう。誰に話しても信じてもらえないだろうな。...